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藤沢には息子が住んでいて時々会いに行きます。普段都内に住んでいるために近いところのものばかり見ていますが、江ノ島付近では遮る物が無く遠くまで見えて大気の色の存在感に取り込まれてしまうところがあります。青空と青い海、夕焼けの空の色が最高です。

 

私は昔は色弱と呼ばれている眼を持っています。遺伝による特性の一つで、生涯変化する者ではありません。近頃人間の心身の多様性について社会の理解が進むようになって、色の見え方が違う人が普通にいることも知られるようになってきたようでお聞きになったことがあるかもしれません。眼科の分類では日本人男性の約5%が該当し白人男性では8−10%がこのような眼を持っていて女性には遺伝の関係で500人に1人とかかなり少ないと言うことです。

 

自分が海岸に立って、こうしてみている最高にきれいな夕焼け空の色は、実は多くの人の見ている夕焼け空と異なっているのだと言われても、自覚も無ければ比較することができないものです。私の色の感じ方の傾向としては一般の方たちより赤がかなり暗く感じられ、赤系と緑系が同系色に感じられるものです。しかし青系と黄色系の差は過ぎるほどに鮮やかに感じられているようです。世界の色は単色では無く、複雑な色の要素の複合体なので、どちらの眼が優れているとか劣っているとか簡単にいえるものではないようです。

 

研究者によると人がこうした眼を持つのは疾患では無くヒトの進化の結果で、赤と緑を区別しない代わりに、色の濃淡や物の輪郭の見分けに眼と頭が使われていると言うことでした。人の能力は個人力では無く、互いに得意分野が少しづつ異なる集団力が大きいらしく、緑色の草の中の緑色の昆虫を見つける能力が高かったり、サバンナの危険な肉食獣、狩りをするときに獲物を早く見つけるなど少数色覚の人たちの得意な役割があったのでは無いかということです。

 

長く日本では色の見え方が異なる人には安全にかかわる仕事や理系の仕事はさせないでおいたほうが良いとされて、過剰に職業制限や進学制限がされていた時代もありました。しかし社会の理解と、誰もが使いやすい配色の製品群が主流となってゆくにつれ、制限も一部に残るのみになりました。さらに、多数色覚の人の眼も人それぞれかなり異なっていることまでわかってきました。

 

モノの考え方やモノの見え方は人によって違うと言いますが、あなたの隣にいる人と同じ風景を見ていても、同じに感じていることは無いと言うことが、例え話で無く科学的に事実だと言うことになり、標準的な色の感じ方という言葉すらおかしくなってきました。今回のイベントをきっかけに、様々な物の色が人によって違うらしいということを思い出してもらえれば幸いです。

伊賀公一|Iga kohichi

CUDO)/視覚情報デザインコンサルタント 

1955年 徳島県生まれ。早稲田大学在学中にITの開く未来に目覚め中退。アップル販売会社や

     IT 系ベンチャー企業の役員を経て、1998年より色覚バリアフリー活動を開始。

2004年 特定非営利活動法人カラーユニバーサルデザイン機構の設立に参画し、副理事長に就任。

2007年 東商カラーコーディネーター1級取得。自身もP型強度の色弱者。 

2008年 グッドデザイン賞受賞 ディレクター

2009年 平成24年度バリアフリーユニバーサルデザイン功労者表彰 内閣総理大臣賞 団体で受賞

2018年 JISz9101.9103 JIS安全色原案作成委員

著書 「カラーユニバーサルデザイン」(ハート出版)

  「色弱が世界を変える」(太田出版) 色弱の子供がわかる本(監修・かもがわ出版)

NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構 副理事長

日本色彩学会 個人正会員

東京商工会 1級カラーコーディネーター

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